その20
シャチの家族はお父さんのヨシ、お母さんのマリ、お兄さんのクマでした。
「ユキちゃんはお父さんとお母さんといつも一緒なの・・・」
シャチの大きなユキの目をのぞき込みながら花子はたずねました。
「私達はいつも一緒よ・・・」
ユキは大きな目をぱちくりさせながら答え、そして花子にたずねました。
「私3才だけど花子ちゃんは何才なの? お母さんとお父さんは?」
ユキは立て続けに花子に質問しました。
「私生まれて10ヶ月ぐらいしか経っていないの。私、お母さんとお父さんは知らないの。生まれた時は暗い砂の中だったもの」
「ヘー! 花子ちゃんはまだ赤ちゃんなのだ。偉いネ・・・!、一人で生活しているなんて」
お兄さんのクマが言いました。
「ユキもクマもまだ、まだお父さんと、お母さんの助けがないと生活できないのに花子ちゃんは感心ネ」
お母さんのマリが優しい声で言いました。
「そうだね、花子ちゃんはたくましいね。ユキもクマも見習わなくちゃ・・・」
バスの効いた声でお父さんのヨシが言いました。お父さんの声がビビッと波を伝わり、花子の体がしびれました。さすがにお父さんの声です。花子は流れ藻の上にあわてて飛び乗りました。でも、お父さんは本当に優しい目をしていました。