その19
花子は前にこのような事があったことを思い出しました。
その時はザトウクジラさんたちでした。その時の経験もあって、今回花子はそうびっくりはしませんでした。流れ藻と共に大きな黒い物体の上を海中に滑り落ち波にもまれてしまいました。
「アー!アップ、アップ・・・ごくん!」
花子は海水をいっぱい飲み込んでしまい、息が詰まりそうでした。
どれくらい時間がたったでしょうか。海は穏やかになってきていました。花子の体はゆっくりと波に揺れていました。少しの間、気を失っていたようです。花子は閉じていた目をそっと開けました。目の前には、大きな大きなやさしい目が花子をじっと見つめていました。
「大丈夫・・・?」
海の底から沸くような声がしました。声の振動は体を突き抜けて行きました。ぼんやりとした顔で花子はその目を見つめ直しました。他にも大きな目玉が花子を見つめていました。
「私、シャチのユキです。あなたは・・・?」
「私、ウミガメの花子よ」
「私達はシャチの家族よ、これから北へ向かって行くのよ!」
「私は何処に行くかはわからない。黒潮の流れにのって旅するのよ」
花子は答えました。本当に何処に行くかわかりませんでした。シャチの家族はみんなで4頭でした。