その12
透き通るような青い空を飛ぶのは気持ちがいいものです。しかし、花子は鳥ではありません。そのまま遠くへ飛ばされてしまいました。落ちたところは、猛烈な波が高くうねっていました。高波に揺られながら海の中から盛り上がった島を見ました。島かと思ったのに、なんと大きなザトウクジラでした。ザトウクジラの目は小さな花子を見つめていました。「おどろかせてごめんね」ザトウクジラは小さな声で言いましたが、花子には雷が落ちたような大きな声に聞こえ、体じゅうに強い衝撃が走りました。「もっと、もっと小さな声で話してよ」と花子は大きな声で言いました。ザトウクジラはずっとずっと小さな声で「私、くじら子よ、よろしく!」と大きな目をパチリとさせて挨拶をしました。