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調査報告(1985-2018) | |||||||||||||||
*** 1985年~2018年 調査報告 *** |
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▼ 2018年度調査地区図 |
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産卵期の調査における用語の定義 |
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ふ化期の調査における用語の定義 | |||||||||||||||
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▼ 屋久島(いなか浜、前浜)年度別上陸回数 |
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2018年の永田地区(いなか浜・前浜・四ツ瀬浜・川口浜)におけるウミガメの上陸状況は、アカウミガメが上陸3,276回(2017年比47.3%)、
アオウミガメが上陸56回(同30.8%)でした。 2017年よりアカウミガメとアオウミガメの上陸回数は、それぞれ52.7%、69.2%大幅に減少しました。 その中で、いなか浜でのアカウミガメの上陸回数は1,026回、前浜では1,913回で、2018年はいなか浜より前浜の上陸回数が多い結果となりました。 ★2008年に大幅に増加した要因は、1973年から屋久島町の条例と当法人が卵を保護した結果と考えられます。 ★2013年は調査を開始した1985年以来最高を記録しました。 |
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▼ 屋久島(いなか浜、前浜)年度別産卵回数 |
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2018年の永田地区におけるウミガメの産卵状況は、アカウミガメが産卵1,662回、アオウミガメが産卵23回でした。 その中で、アカウミガメの産卵回数はいなか浜で671回(2017年比37.3%)、前浜では873回(同85.1%)であり、2017年よりいなか浜は62.7%の大幅な減少で、前浜は14.9%減少しました。 |
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▼ 屋久島(いなか浜、前浜)年度別産卵率 |
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2018年の浜別の産卵率(アオウミガメ含む)は、いなか浜で65.2%、前浜で45.5%と、2017年よりそれぞれ6.9%、11.4%上昇しました。 |
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▼ 屋久島(いなか浜)年度別上陸回数、産卵率推移 |
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ウミガメの観察会はほとんどいなか浜で行われ、多くの人が夜のいなか浜を訪れました。 2012年にはいなか浜のトイレと駐車場が新設され、駐車場に入ってくる車のライトがさらに浜に入るようになり、 依然としてウミガメを取り巻く環境は改善されていませんでした(写真a)。 2016~2017年はウミガメ観察会を主催している永田ウミガメ連絡協議会と協力し、 遮光板の上部にダークカーテンを貼り暗い環境にすることで、ウミガメの上陸に影響が少ないようにしました。さらに、ウミガメ観察会の見学者の受付を「うみがめ館」で行ったところ、駐車場付近の砂浜が例年よりもさらに暗くなりました。 このことにより2015年よりも30.0%も高い割合で、駐車場に近い所でウミガメ観察会を行うことができました。 駐車場近くの車のライトが入りやすい場所を、ウミガメが上陸することのできる暗い環境に整えることができたと言えます。 2018年はウミガメ観察会の受付・レクチャーを浜上部の駐車場横のレクチャー室で行ったため、そこからの人工の光が浜に漏れ、 駐車場付近の観察会をしやすい場所へのウミガメの上陸が多くはなく、2015年以前の状況に逆戻りしたようでした。2016年の環境を維持できなかったのは非常に残念でした ※2010年度のアサヒビール(株)からのご寄付及び2016年度のサンカラホテルのお客様からのご寄付(サンカラ基金)により、 車のライトなどの光が漏れないように、 ハッピーいなか浜駐車場とトイレ横の駐車場に遮光板を設置(写真b,d)しましたが、2018年9月下旬に通過した台風24号による高波で一部が崩壊しました(写真c,e)。
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▼ 屋久島(いなか浜・前浜・四ツ瀬浜・川口浜)年度別上陸個体数推移 |
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2018年、標識調査によって確認された永田地区のウミガメの上陸個体数は、
アカウミガメ474個体、アオウミガメ7個体の計481個体でした。アカウミガメは2017年の850個体よりも376個体大幅に減少、アオウミガメは2017年の10個体よりも3個体減少しました。 上陸・産卵回数と合わせて考慮すると、アカウミガメ1個体あたりの平均上陸・産卵回数は上陸が約6.9回、産卵が約3.5回で、2017年より上陸で1.3回減少し、産卵回数は同じでした。 回帰個体については、1~3年回帰の割合が全体の79.9%を占め、2018年に個体数が最も多かった回帰年数は2年回帰で、その個体数は118個体と、回帰個体全体の41.7%を占めました。 回帰年数が最も長いものは、アカウミガメの10年回帰が1個体で、10年を超える回帰は確認されませんでしたが、これは過去(1985年以降)に装着した体外標識がほとんど脱落しているためと考えられます。 |
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▼ PITタグによって履歴が繋がった個体の推移(個体数・回帰個体数に対する割合) |
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2018年、PITタグによって履歴が繋がった個体の数は129個体でした。回帰個体数に対するPITで繋がった個体の割合は44.8%でした。体内に埋め込むPITタグの効果は年を追う毎に高くなってきているため、今後もPITタグを体外標識と併用することが望まれます。 |
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▼ 屋久島(いなか浜・前浜)年度別ウミガメ見学者数推移 |
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2018年の浜(いなか浜・前浜)を訪れたウミガメの見学者(昼間の見学者含まず)は7,174名と2017年より1,767名減少しました。 2018年は永田ウミガメ連絡協議会が5~7月の3ヶ月間、いなか浜にてウミガメ観察会を行いました。前浜では観察会を行わなかったためシーズン(4~9月)を通しての見学者は221名でした。 |
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▼ 屋久島(いなか浜・前浜)年度別全巣の帰海率推移 |
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2018年のアカウミガメの全巣の帰海率(浜で産み落とされた卵の内、海に帰っていくことのできた子ガメの割合)は、いなか浜で52.2%(2017年は44.5%)、前浜で60.7%(同47.4%)となり、全卵数の5~6割の子ガメが海へ帰って行ったことが示唆されました。 2018年のいなか浜と前浜の帰海率はそれぞれ昨年より上昇しました。いなか浜は脱出確認調査において見逃した巣があることを考慮すると、本来の全巣の帰海率はさらに高かったであろうと推測されます。 ※2018年に行われたウミガメ観察会でも、子ガメ保護柵内で産卵しているウミガメを見学させることがありました。 ★2005年は保護ロープ外で産んだウミガメを見学できるように、ロープの下側に板の壁を設置しました。保護ロープ外で産卵させた産卵巣は速やかにロープ内に移植しました。 この結果、子ガメ保護柵内に見学者がほとんど入らなかったために全巣の帰海率が高くなりました。 |
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▼ 屋久島(いなか浜・前浜)での子ガメのふ化率と踏圧 |
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2018年の永田地区(いなか浜、前浜)における、踏圧があった巣と踏圧のない巣では、ふ化率(産み落とされた卵の内、ふ化した子ガメの割合)・ 帰海率(産み落とされた卵の内、脱出した子ガメの割合)・脱出成功率(ふ化した子ガメの内、脱出した子ガメの割合)に顕著な差があり、踏圧があった巣はそれぞれ57.2%・32.1%・57.0%でしたが、 踏圧のない巣ではそれぞれ77.7%・73.2%・94.2%でした。 | |||||||||||||||
f:ふ化前に死んでいた子ガメ |
g:ふ化後に死んでいた子ガメ |
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シーズン中、浜にはウミガメの見学者や、浜で遊ぶ人が大勢出入りします。人の出入りが多い所では子ガメが地上に脱出できる割合が下がっています。これは巣穴を上から人に踏まれ、圧死している可能性が考えられます。 また、無事に巣穴から脱出しても見学者に誤って踏み殺されてしまうことがあります(写真f,g)。 |
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見学者によって巣穴が踏み固められないように、産卵巣が最も多い、いなか浜・前浜に4月20日から9月27日まで子ガメ保護柵を設置し(環境省他)、
柵内に入らないように協力を呼びかけ、ふ化する子ガメたちを保護しています(写真h,i)。 2018年の保護柵は2017年よりも2日も早く設置され、1999年の保護柵設置以来最も早い設置でした。4月20日に設置されたのち、6月29日に拡張、8月21日に台風に向け撤去、翌22日に再設置と、二点三点しました。 保護柵外は、保護ロープに沿って多くの人達が歩きます(写真j)。しかし、2018年は保護柵を設置したものの、いなか浜で脱出を確認した産卵巣の割合は柵内89.9%、柵外58.3%で顕著な差が見られました。 いなか浜全体としての保護柵内のふ化率は79.0%、保護柵外のふ化率は79.3%であり、保護柵外のふ化率の方が0.3%高い結果となりました。保護柵内のふ化率は昨年より12.0%上昇しました。 踏圧死の産卵巣をなくしてふ化率、帰海率、脱出成功率を上昇させるためには、今年度のように、子ガメ保護柵をウミガメシーズンの初め(4月下旬)より設置し、多くの人がよく通る地点の産卵巣については積極的に卵を安全な場所へ移植する必要があります。そのためにはウミガメの産卵シーズンの5~7月に移植をするための人員が数人は必要ですが、近年はウミガメ産卵期のボランティアが不足しているため、十分に移植が行えていないのが現状です。 |
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<2018年いなか浜子ガメ保護柵設置場所> | |||||||||||||||
いなか浜保護柵設置経過状況4月20日~6月28日(いなか浜全体) 6月29日~8月21日(B・C地区) 8月22日~9月27日(B・C地区) |
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<2018年前浜子ガメ保護柵設置場所> |
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▼ 屋久島(いなか浜・前浜)での2018年度子ガメの雌雄の割合 |
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ウミガメの雌雄は卵の中で胚が発生する時の砂中の温度により決定されます。29.7度以上でメスが大部分を占め、それ以下だとオスが大部分を占めます。地球温暖化が進む昨今、メスの割合が増えると考えられがちですが、気候が変わり雨が増えると、地面が冷やされてオスの割合が増える可能性もあります。 2018年、いなか浜・前浜から海へ帰って行った子ガメの数は、メスが約33,000匹、オスが約62,000匹と推定できます。雌雄の割合は♀:♂=3.5:6.5と推測され、2018年は、オスの方が30%ほど多いという結果となりました。例年だと6月、7月、5月の順で産卵回数が多いのですが、2018年は6月、5月、7月の順で、7月の上陸産卵回数が5月よりも少なかったことから、オスが多く生まれる結果になったと考えられます。 |
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▼ 子ガメの被害 |
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k:タヌキに掘り返されていた産卵巣 |
l:卵を捕食するタヌキ |
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子ガメ保護柵(写真i,j)を設置し、観察ルールなどで立ち入らないよう呼びかけをしたため、保護柵の中に立ち入る人はほとんど見られなくなりました。 しかし、人の出入りが少ないいなか浜のD地区や前浜のE地区端、ふ化調査をほとんど行っていない四ツ瀬浜などではタヌキによる巣穴の掘り返しと思われる被害が出ています(写真k,l)。 タヌキは足が短いので普通は産卵巣まで掘り抜くことはできませんが、高波や強風の浸食で浅くなった産卵巣や、ふ化した子ガメが地表近くまで登ってきている巣などを掘り返して、 卵や子ガメを捕食したり、脱出した子ガメも捕食したりします。 |
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m:巣穴を掘り返す野良猫 | n:卵を捕食し、飛び立つカラス | ||||||||||||||
o:浜に設置した籠罠にかかった野良猫 |
p:産卵巣の周りに群がるカラス |
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野良猫やカラスなどの動物による捕食も確認されています(写真m,n)。 2014年から2017年まで、捕食調査のため浜に罠を仕掛けました。罠にかかったのは、タヌキ・野良猫(写真o)でしたが、センサーカメラではカラスや野良猫、イタチの姿も確認されています。また、カラスは、2015年以前ほど多くはなかったものの、掘り返された産卵巣の周りに数え切れないほど群がる姿が何度も目撃されました(写真p)。このことから、野良猫やカラスによる被害はタヌキ以上だと推測されます。 |
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q:光に向かう子ガメ |
r:浜に漏れる光 |
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子ガメは走光性(光に向かっていく性質)が非常に強く(写真:q)、見学者が浜に入る際に点灯するライト、カメラのフラッシュ、携帯電話の光、人家の明かりなど、近年浜に人工的な光が氾濫しているため(写真r)、子ガメはなかなか海へたどり着けません。また、浜で焚き火をしていると火の中に飛び込んできてしまいます。 前浜の一部の地区では無事脱出した子ガメが集落の外灯などの光により、海とは反対側にある川へ向かっていることが足跡により確認されたこともありました。 |
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▼ 上陸時の事故 |
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基本的に海で生活するウミガメは産卵する時にだけ砂浜に上陸します。
しかし、陸地での行動が不馴れなため、歩行中に消波ブロックや岩場にはまったり、護岸から落ちたりする事故に遭遇し、身動きがとれなくなってしまうことがあります。
長時間水気のない状況におかれたウミガメは、太陽熱により体の水分がなくなったり、体温が上昇したりして力尽き、死んでしまう恐れがあるため迅速に救出する必要があります(写真:s)。 2018年は永田地区の浜で合計5頭のウミガメを救出しました(写真:t,u)。 |
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▼ 屋久島(いなか浜・前浜・四ツ瀬浜・川口浜)における出来事 |
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▼ 永田浜のウミガメを取り巻く環境について(2018) |
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* 詳細は、賛助会員向け発行のウミガメ調査報告書に記載されております。 * 当館による使用許諾を得ずに、上記調査データを無断で利用、転載することを禁止します。 |
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